菓子折りとは
菓子折りとは、和菓子や洋菓子を箱詰めにした贈答用の詰め合わせを指します。昔から日本では、人とのご縁や気持ちを大切にする文化があり、その象徴ともいえるのがこの「菓子折り」です。
例えば、会社への訪問やご挨拶、お礼や謝罪、退職のご挨拶など、さまざまなシーンで「菓子折り」を贈ることが礼儀とされてきました。
菓子折りの歴史的背景
日本では「手土産文化」が古くから根付いています。江戸時代にはすでに、訪問先に持参する「お土産」として和菓子が贈られていた記録があります(出典:国立国会図書館デジタルコレクション)。
また、昭和期にはデパートや和菓子店が「折箱入り」の菓子詰め合わせを主流商品としたことで、現代の「菓子折り」文化が定着しました。
菓子折りの渡し方と言葉
菓子折りは「品物そのもの」だけでなく、「渡し方」や「添える言葉」まで含めて、相手への敬意や思いやりを表現します。
渡し方の基本マナー
1. 両手で丁寧に差し出す
渡す際は必ず両手で、相手の正面に菓子折りの表書きが読める向きで差し出します。片手や投げやりな態度はNGです。
2. 包み紙や掛け紙は外さずに
包装紙やのし紙はそのままに。受け取った側が「未開封=気持ちをそのままいただく」意味合いがあり、包みを外して渡すのは失礼とされます。
3. 机や棚に置かず、直接手渡しする
訪問時は座ったままではなく、必ず立ち上がって手渡ししましょう。どうしても渡せない場合は「こちらに置かせていただきます」と一言添えます。
菓子折りを渡す際の言葉例
- お礼の場合:「ささやかですが、皆様で召し上がっていただければ幸いです。」
- 謝罪の場合:「ご迷惑をおかけしました。心ばかりですが、どうぞお納めください。」
- 退職の挨拶:「これまで大変お世話になりました。感謝の気持ちを込めて、皆様で召し上がってください。」
たとえ話:「手紙を手渡す気持ちで」
菓子折りを渡すときは、ただ“物”を手渡すのではなく、まるで自分の気持ちを綴った手紙をそっと差し出すような気持ちが大切です。手紙も、書いた内容だけでなく、封筒や便箋の選び方、差し出すタイミングまでが心遣いになりますよね。菓子折りも同じで、あなたの思いや感謝を形にして伝えるものなのです。
菓子折りの渡し方と紙袋
紙袋はどうする?渡し方の基本
菓子折りを店舗で購入すると、必ず「紙袋」に入れてもらうと思います。
実際に渡す時、紙袋に入れたままがいいのか、それとも外して渡すべきなのか――迷う方が多いのではないでしょうか。
基本ルール
- 基本は紙袋から出して直接渡す
紙袋はあくまで“運搬用”です。訪問先や相手の前に着いたら、袋から菓子折りを出して渡しましょう。 - 雨天や持ち帰りが大変な場合は紙袋ごとでもOK
相手がすぐ持ち帰る場合や、雨で品物が濡れそうなときなどは「紙袋ごと」渡しても失礼にはあたりません。その際は「紙袋のまま失礼いたします」と一言添えるのがマナーです。
紙袋の処理マナー
渡した後の紙袋は、持ち帰るのが基本とされてきましたが、現代では「置いていく」ことも一般的になりつつあります(出典:NHK生活情報2024年11月)。
ただし、ビジネスシーンでは「不要なゴミを増やさない配慮」として紙袋は持ち帰る配慮も大切です。
菓子折りの渡し方タイミング
渡すタイミングの正解は?
菓子折りを渡すタイミングも、実はとても重要です。
タイミングを間違えると、せっかくの気遣いが伝わらなかったり、かえって失礼に思われてしまうこともあります。
【ビジネス訪問の場合】
- 応接室や会議室に案内された後、着席して最初の挨拶が終わったタイミング
いきなり渡すのではなく、「名刺交換」や「ご挨拶」が済んでからがベストです。
【個人宅への訪問の場合】
- 玄関先で渡すのは避け、部屋に通されてから
家の中で落ち着いたタイミングで「本日はお招きいただきありがとうございます」と添えて渡しましょう。
【退職・お礼・謝罪の場合】
- 挨拶の流れの中で、言葉とともに
感謝やお詫びの言葉と一緒に渡すことで、より心が伝わります。
菓子折り お礼
お礼の菓子折り、選び方とマナー
お世話になった方や会社への感謝を伝える手段として、菓子折りは今も多く利用されています。
特に2025年現在、コロナ禍以降の「人とのつながり」を大切にする気運もあり、感謝の気持ちを伝える贈り物として菓子折りはますます注目されています(参考:経済産業省「ギフト市場動向2024年」)。
お礼菓子折りのポイント
- 季節感を意識した選択
春は桜味、夏は涼菓、秋は栗や芋、冬はチョコレートなど、季節の素材を活かしたものを選ぶと気が利いている印象になります。 - 相手の人数に配慮した内容
会社や複数人宛てなら、小分け包装の焼き菓子や個包装の和菓子が便利です。 - アレルギーや宗教上の配慮も忘れずに
近年では「アレルギー表示」や「ハラール認証」などを明示した商品も多く、相手を気遣う選択が大切です(出典:消費者庁アレルギー表示ガイドライン2024年改訂)。
お礼を伝える言葉
「この度は大変お世話になりました。皆様でお召し上がりいただければ幸いです。」
「日頃の感謝の気持ちを込めて、ささやかですがお持ちしました。」
心を込めて伝えるコツ
「モノより気持ち」とはよく言いますが、菓子折りも同じです。高価なものやブランド品でなくても、相手を思う“ひと手間”が喜ばれるポイントです。
例えば「お子様がいらっしゃると伺いましたので、お好きそうなお菓子を選びました」といった“ひとこと”を添えるだけで、ぐっと温かさが伝わります。
菓子折り 謝罪
謝罪で渡す菓子折りの選び方
ビジネスやプライベートを問わず、ミスや迷惑をかけてしまった際には、誠意を伝えるために菓子折りを持参することが多いです。
ただし、謝罪の際は「贅沢すぎる品」や「過度な高級品」は避けるのがマナーです。
理由は、相手が「受け取りにくさ」を感じたり、「物で許しを買おうとしている」と受け取られかねないためです。
謝罪時に選ぶべき菓子折り
- 価格帯は1,000~3,000円程度(相手や内容によって前後します)
- 日持ちのする個包装タイプ
- 派手なパッケージより、落ち着いたデザインを選ぶ
- のし紙は「無地熨斗」や「お詫び」と書かれた短冊を用いる
(※ビジネスシーンでは、会社の規定や業界慣例もあるため、迷った場合は上司や総務担当に相談しましょう。)
謝罪時に添える言葉
- 「この度はご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした。お詫びのしるしとして、どうぞお納めください。」
- 「ささやかではございますが、皆様で召し上がっていただければ幸いです。」
謝罪菓子折りで大切なこと
「本当に誠意は伝わるだろうか?」と不安になる方も多いと思います。
でも、最も大事なのは“形よりも気持ち”です。相手の立場に立って、心を込めて謝罪し、菓子折りを「心のしるし」としてお渡ししましょう。
菓子折り 退職
退職時に贈る菓子折りの意味と選び方
退職時のご挨拶として、職場の皆さんに菓子折りを贈る習慣は、今も多くの企業で続いています。
「これまでの感謝を伝えたい」「気持ちよく送り出されたい」という思いから、菓子折りを選ぶ方が多いようです(参考:日経クロストレンド「職場ギフト事情2025」)。
退職菓子折りの選び方
- 個包装で配りやすいものを
配る手間や衛生面を考えて、個包装タイプが人気です。 - 人数に応じたボリュームを
小規模オフィスなら小箱、大きな職場なら大容量詰め合わせが便利です。 - 相手の年齢層・男女比に合った内容を
例えば若い方が多ければ洋菓子、年配の方には和菓子も喜ばれます。
渡すタイミングと方法
- 最終出勤日に直接手渡す
職場全体で集まるタイミングや、ひとりひとりにご挨拶しながら配るのが理想です。 - 不在の方にはメッセージを添えてデスクに置く
- 「今までお世話になりました。どうぞ皆さまでお召し上がりください」と一言添える
退職菓子折りで心に残るコツ
退職時は、「これまでの感謝」を伝える絶好の機会です。
たとえば「みなさんのおかげで、楽しく働けました」といった自分の言葉で伝えることが、何よりも大切。
誰もが「自分の存在を認めてもらえた」と感じると、それが良い職場の雰囲気づくりにもつながります。
どうぞ、ご自身のペースで、無理のない範囲で選んでみてくださいね。
菓子折りの勘定科目は何になる?
基本的な考え方
「菓子折り」を購入し、取引先や社内で配る場合、その用途によって適切な勘定科目が異なります。
会計上は、“何の目的で誰に渡したか”を明確にすることが大切です。
主なケース別の勘定科目
1. 取引先への訪問・手土産の場合
勘定科目:交際費(交際費・接待交際費)
- 取引先への訪問時、商談や挨拶、謝罪やお礼などで菓子折りを渡す場合は、交際費として処理します。
- 法人税法上の「交際費等」として、税務上の限度額や損金不算入規定がありますので、金額や相手先の管理も重要です。
2. 社内の従業員への配布(退職や慰労等)
勘定科目:福利厚生費
- 社内イベント、従業員の慰労や退職、節目の配布などで菓子折りを配る場合は、福利厚生費として処理するのが一般的です。
- ただし、特定の個人への贈与や高額なものは「給与」と見なされる場合もあるため注意が必要です。
3. お客様への粗品・記念品
勘定科目:販売促進費・広告宣伝費
- 店舗でのお客様への配布や、キャンペーン、記念品として不特定多数に配る場合は「販売促進費」や「広告宣伝費」として処理します。
4. 慰謝や見舞い、お詫びでの贈答
勘定科目:交際費 または 寄付金
- 謝罪や慰謝のための贈答は「交際費」が基本ですが、社会的な意味合い(災害見舞いなど)が強い場合は「寄付金」になることもあります。
- この判断はやや専門的なので、念のため税理士等の専門家にご確認ください。
仕訳の具体例
取引先への菓子折り(3,000円)の場合
(借方)交際費 3,000円 /(貸方)現金または預金 3,000円
従業員慰労のための菓子折り(5,000円)の場合
(借方)福利厚生費 5,000円 /(貸方)現金または預金 5,000円
来店客への配布(販促)の場合
(借方)販売促進費(または広告宣伝費) 10,000円 /(貸方)現金または預金 10,000円
注意点と2025年最新動向
- 2024年10月のインボイス制度施行以降、領収書の保存や仕入税額控除要件が厳格化されています。必ず「相手先名・用途」を記録しましょう。
- 金額が高額、または個人に渡す場合は「給与扱い」や「贈与税」課税の対象になることも。社内規定や税理士の指導に従いましょう。
- 税制改正や経理基準のアップデートに注意し、最新の国税庁公表情報や会計士の監修情報を参考にしてください。
迷ったときの“たとえ話”
たとえば「菓子折りは、会社の財布から出す“感謝や心配りのプレゼント”」です。その“プレゼント”が、社外の人向けか、社内の従業員向けか、販促なのか…目的地が違えば財布の仕分け方(勘定科目)も変わる、とイメージしてみてください。
「菓子折りの勘定科目は何が正しい?」と迷う場面は多いと思いますが、一番大事なのは“用途をきちんと記録しておくこと”です。
細かいルールや例外もあるため、金額が大きい場合や特殊なケースでは、必ず税理士などの専門家にご相談ください。
菓子折りで「思いやり」を形に
菓子折りは、単なる“お菓子の箱”ではありません。
あなたの「ありがとう」や「ごめんなさい」、そして「これからもよろしく」の気持ちを、やさしく包んで相手に届けるための“心の贈り物”です。
時代とともにマナーも少しずつ変化していますが、「相手を思いやる気持ち」さえあれば、正解はひとつではありません。
たとえば紙袋の扱いや、渡すタイミングで迷ったときも、この記事で紹介した“基本”を参考にしつつ、ご自身や相手の立場を思いやる気持ちを大切にしてください。
「こうすべきかな…」「この渡し方で失礼じゃないかな?」と迷ったときには、どうぞこの記事を何度でも読み返してください。
小さな工夫やひとことが、きっとあなたの人間関係をより良いものにしてくれるはずです。
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